それはまったく突然に。
聞いたことのないアラーム音がiPhoneから聞こえてきた。寝ぼけながら画面をタップ。
「なんだよ、こんなアラーム音を設定した覚えはないぞ。まったくおかしな携帯だなぁ、、、いま何時だ?」
もうひと眠りしようと布団に顔をうずめた。
ほどなくして、今度は遠くで何やら話し声が、、、
あまりはっきりとは聞き取れなかったが、集中して聞き耳を立ててみると
「キタチョウセン…ミサイル…ハッシャ…」
「えっ?」「えっ!?」「なにっ!?」
あわてて、横で寝ていた妻をゆすり起こす。「ちょっとぉ、北朝鮮がミサイル発射したとか言ってるぞ!」
「頑丈な建物や地下に避難してください…って言ってるみたいだ」
私も妻もただ茫然としていた。「そんなこと言ったって、避難するとこなんて無いじゃんねぇ!」妻がボソッと言う。
築40~50年の古い木造住宅が密集する田舎の静かな場所だしなぁ、、、コンクリートの建物なんて無いし!地下なんて無いし!
静寂が続く。「なんなの~!も~!どうせなら原爆みたいに一瞬で殺してよ!」と妻が愚痴る。
その時の私にできることは、すやすや眠っている4歳の娘の顔を目に焼き付けておくことだけだった。いざとなったら娘に覆いかぶさって、爆発や熱風から娘を守ってやろうと、、、
テレビをつけると、なんとも無機質な、シンプルな画面とともに、アナウンサーが繰り返し、くりかえし政府発表の文章を読み上げていた。「対象地域に入っているなぁ…」とそれぞれがつぶやく。
ずいぶん時間が経っているように感じたが、まだミサイル発射から10分も経っていなかった。
「ミサイルが発射された模様」とだけ伝え続けるテレビ。ミサイルは今どこなんだ!?どこに落ちるんだ!?そっか、映画のようにミサイルの映像や軌道がリアルタイムに分かることはないのかぁ。自分たちの頭上に落ちてくるかもしれないけど、そんなことは何ひとつ分からないまま終わるもんなんだぁ。
もうひとつ思ったのは、「ミサイルはいきなり東京を狙うんじゃないのか!とりあえず東北地方に落として、そこの人たちを犠牲にして、中央に警告を与えるって算段か…」
いずれにしろ今回の出来事で、「戦争」というものがいっそう現実味を帯びてきたということと、いざとなったら私たちには何もなすすべがないということが分かった。
いまテレビでは騒がしくミサイル報道がなされているだろうか?目の前では、わがスタンドに給油に来た軽トラックのおっちゃんが、いつものように朝刊に目を通しながら、マーくんがどうのとか野球の話をぶつぶつ言っている。本日も晴天なり!